腹落ちする戦略への近道とは 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その58)
◆ ありたい姿は自分ごとにする
1. 腹落ちしない戦略
事業戦略や技術戦略のコンサルティングを行う中で次のようなケースに出会います。
時間をかけ、優秀なメンバーを揃えて作られた戦略であっても、稟議が通らない、決裁されないという事例です。更にこの原因を追求していくうちに、こんな事実が表に出てくることがあります。それは、戦略立案者が納得していない、つまり戦略の重要要素である未来のありたい姿・ビジョンそのものが腹落ちしていないということです。
既存商品・シリーズ商品以外の新規事業・新商品を想定した戦略であれば、作った本人、チームが納得し切れていない戦略が稟議・承認を得ることは、私の経験上、まずありえません。では未来のありたい姿はどのようなものが良いのでしょうか。
2. 自社・自分に近づける
昨今の戦略策定の王道は未来起点(未来の市場ニーズ)であるべき姿・ありたい姿を設定する方法です。
未来起点で社会環境や市場トレンド、技術の進化などを捉えながら進めますが、この時におこなって欲しいことは、「自社」「自分」の視点を入れることです。一見当たり前のように感じるかもしれませんが、実は形式上、実施しているだけで重要視していない事例に多々遭遇します。
私は「鳥の目」、「虫の目」で観ると表現しますが、「虫の目」つまり、自社・自分の主観を積極的に取り入れます。もちろん独りよがりな予想は問題がありますが、「鳥の目」で客観的に社会全体、業界や市場全体を網羅し予測した後には、必ず「虫の目」自社・自分視点でそれらの環境を課題に変化させ、結びつけます。
この「虫の目」視点による課題への落とし込みができるか、できないかが腹落ちする戦略にするためのポイントとなります。私は省リソース、つまり短時間で戦略を作り上げることを推進していますが、未来のありたい姿を腹落ちさせる時間は積極的に取っています。
どんなに社会的な意義や革新的な技術を追求した戦略であったとしても、自社・自分にとって魅力的に感じない戦略は意味がありません。魅力的と感じる対象は、自社=企業としての利益創出、R&D組織として技術シーズ獲得であったり、自分=自身、自身の家族、友人の悩み、困りごと、自身のスキルアップ、キャリア獲得など様々あります。これらの課題といかに未来のありたい姿を紐づけることができるか、近づけることができるかをチェックすることが腹落ちする戦略への近道です。
3. ありたい姿を自分ごとにするポイント
最後に未来起点で自社のありたい姿を設定するポイントを紹介します。こちらは簡易的に行う方法となりますので、ぜひ実践してみてください。
(1) 「鳥の目」仮説
PEST(政治・経済・社会・技術)分析に代表されるマクロ的な環境分析を行います。この時、社会・市場・業界全体を取り巻く課題を仮説します。
(2) 「虫の目」仮説
仮説した課題に対し、自社はどんな関わりができるかを仮説します。この時点では解決プランを具体化するのではなく、どんな貢献ができそうかという可能性をリスト化します。
(3) 「魅力度」診断
リストに対し、実現した際の自社のメリットを定性的・定量的に診断します。同じく自分のメリットを定性的・定量的に診断します。この時、重要なのは自身の都合を最優先させることです。自社・自身双方が魅力的であるものをピックアップし、未来のありたい姿を描きます。
この方法はあくまで簡易的な方法ではありますが、戦略が腹落ちしていない場合は、(1)~(3)を実施し、現状のありたい姿と比較をしてみることを推奨します。
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