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イノベーションの創造 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その134)

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その133)へのリンク】
前回までの2回にわたり、失敗の金銭的コストを低減する方法について解説をしました。今回からは、「失敗の時間的なコストを低減する方法」について、解説します。
●「踏み出すこと・踏み出そうとすることで発生する直接的コスト」×「時間的コスト」
日々我々は、仕事で、また私生活においても、忙しい毎日を過ごしています。このような時間的な制約の中で、失敗する可能性が高いイノベーションのための活動に時間を捻出することは、ほとんど不可能です。しかし、この状態を放置しておいては、イノベーションを起こすことはできません。なんとかイノベーションに取り組むための時間的な余裕を、生み出さなければなりません。
●背景にあるイノベーションの阻害要因:現在バイアス
このようなイノベーションに向けての活動を軽視し、目先の活動に時間を優先的に投入してしまう理由に、行動経済学でいう現在バイアスがあります。現在バイアスとは、「将来の大きな利益より、目の前の小さな利益を追ってしまうこと。」というような説明がされることが多いのですが、必ずしも明確な利益だけについてではありません。
目の前の仕事の内容やその結果は極めて明確です。一方で、将来の仕事の内容やその結果(その仕事をすること、しないことの結果)については、不明確です。そのため、人間はどうしても目の前の仕事を優先してしまうのです。
それではこのような現在バイアスに抗して、イノベーションに向けての活動に時間を投入するにはどうしたら良いのでしょうか。いくつかのアプローチがあります。それらを順に議論いていきたいと思います。
●時間的余裕を生み出すアプローチ(その1):イノベーションのために時間的余裕を持つという強い意志を持ち実行する
まず、時間的余裕を持つという、強い意志を持つことをしなければなりません。ここで重要なことが、「いまだ気づいていない」イノベーションに向けての活動に、時間を割ということです。イノベーションに関係しそうということが分かっている活動には、現在バイアスの存在故、時間を割こうとする気持ちは発生します。重要なことは、「イノベーションに関係しそう」とわかる前の段階の活動に、時間を割かなければなりません。なぜなら、さもないと「イノベーションに関係しそう」と思うまで至らないからです。
【永谷園のぶらぶら社員】
お茶漬けで有名な永谷園に、ぶらぶら社員という仕組みがありました。これは1979年に当時の永谷嘉男社長が作った仕組みで、「2年間、食べたいものを食べ、行きたいところに行き、とにかく”ぶらぶら”して新商品のアイデアを考えることに専念」するというものです。
実際にぶらぶら社員の辞令を受けた能登原隆史さんは、後に麻婆春雨とうヒット商品を生み出します。能登原さんが辞令を受けた段階では、当然新商品のアイデアなどありません。また何をすればイノベーティブな商品を創出することができるかも分かっていません。
このぶらぶら社員のポイントは、まだ何も分かっていない段階で、イノベーション創出のための時間(だけ)を与えるということです。
【3Mの15%ルール】
もちろん、この永谷園のぶらぶら社員のように、一人の社員が全ての時間をイノベーションのネタ探しに時間を使うということはあっても良いと思います。しかし、より有効な仕組みが、全ての社員がこのような時間的な余裕を持つことだと思います。
なぜ全員かというと、多様な知識、多様な思考パターンを持つ多数の人たちが、イノベーション創出活動を行った方が、より多くの多様なアイデアを生み出すことができる可能性が高まるからです。
3Mには有名な15%ルールがあります。自分の時間の15%は、すでに決まっている仕事以外に自分のやりたいことに使って良いというルールです。この15%という割合は、ちょうど良い数値のように思えます。あくまで感覚ですが、10%では少しすくないな、でも20%を捻出するのはちょっと難しそうだという感じです。ですので、あらかじめ自分の時間の15%ぐらいは、いまだ気づいていないイノベーションのための活動に時間を割く、という強い姿勢を持ち活動することを奨励することをしてみてはいかがでしょうか。
次回に続きます。
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