...
位置関係-4 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その107)

現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。前回まで三度にわたり、KETICモデルの思考の中の「位置(関係)で整理する」を解説しました。今回はこれまでの解説を踏まえ、このような思考でどうイノベーションを実現するかを考えたいと思います。
アナロジー的な発想を含めて、空間的位置関係からイノベーティブな発想をする方法として、以下があると思います。事例を含めて解説をしていきます。
1.対象に空間的位置関係を示す言葉を当てはめて、その上で従来とは逆の思考をする
(1) 上下の例
「真実の瞬間 SASのサービス戦略はなぜ成功したか」という、SASのCEOであるヤン・カールセンが著した本があります。彼はこの本の中で、逆ピラミッドの組織図を提唱しています。通常組織図は一番上の頂点にCEOが、現場の社員はピラミッドの底辺に、そして真ん中に中間管理職が置かれます。
しかし彼は、一番上には常に顧客と接する立場にある現場の社員が、そしてその下に管理職が、最後に一番下にそれを支える形でCEO置かれるべきであるという主張をしました。まさに従来の常識の上下を逆に考えたものです。
2.対象に空間的位置関係を示す言葉を当てはめて、自分のいる側とは別の側から見てみる
(1) 遠近の例
現在、私はある会社の社外取締役をしていますが、この会社は海外に数多くのグループ会社をもっています。この状況に前回解説した「遠近」を当てはめてみると「近」は日本の本社の社員、「遠」は海外のグループ会社の社員と考えることができます。
この会社の日本にいる社員は常に「近」の立場で「遠」を見ているわけですが「遠」から見た「近」は全く別の景色を見ている、もしくはそもそも「遠」の社員は「近」のことはほとんど認識・関心がないことも想定されます。
後者に関しては、私は面白い体験をしたことがあります。米国の国内線に乗った時に、隣の席の米国のビジネスマンとの会話となり、彼にその会社の本社はどこかと聞いたところ、彼は悪びれる風もなく、知らないと答えたことがありました。日本では自社の本社がどこにあるかぐらいのことは、全ての社員が知っていることですが、きちんとしたスーツを着たビジネスマンからそのような答えを聞いて、大変驚いた経験があります。
「遠」の立場で「近」を見るようにすると「近」の人たちには想像がつかなかったような、それこそイノベーティブな価値創出に結びつくような「近」の「遠」のマネジメント上の問題点やその解決策などが、浮かびあがる可能性があります。
3.対象に空間的位置関係を示す言葉を当てはめて、その空間的位置関係を構成する構造を変えることを考える
(1) 内外の例
「内外」も空間的位置関係を示す言葉です。通常「内」と「外」の間には「外」の影響を排除し「内」に安定的な環境を維持するための遮蔽物や外壁が存在します。しかし、この遮蔽物や外壁が「外」の影響を排除するに最適なものとはかぎりません。
なぜなら、この遮蔽物や外壁は「内」の環境の制約要因、たとえば「内」の空間を狭めるなどにもなっているからです。
音の技術にノイズキャンセリングがあります。従来外界から入ってくるノイズや騒音は、防音壁やイヤーマフなど物理的なもので遮蔽していますが、空間や行動の制約や必要な音自体も遮音してしまうなどの問題があります。防音壁やイヤーマフを使わずこのような制約・問題を解消して、対象とする波長だけを遮断するのが、ノイズキャンセリング技術です。
次回に続きます。
続きを読むには・・・
この連載の他の記事
現在記事
「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事
もっと見るイノベーションの創造 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その137)
【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その136)へのリンク】 前回は会社の経営陣やマネジャークラスがイノベー...
【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その136)へのリンク】 前回は会社の経営陣やマネジャークラスがイノベー...
発展段階「期」について 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その63)
今回も、「思い付く」ための「知識・経験を整理するフレームワーク」の解説です。今回は、発展段階(「期」)ついて解説します。 ◆関連解...
今回も、「思い付く」ための「知識・経験を整理するフレームワーク」の解説です。今回は、発展段階(「期」)ついて解説します。 ◆関連解...
市場知識 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その34)
前回まではKETICモデルの知識の3つの構成要素である、技術知識、市場知識、自社...
前回まではKETICモデルの知識の3つの構成要素である、技術知識、市場知識、自社...
「技術マネジメント総合」の活用事例
もっと見るソフト開発計画の作成方法 プロジェクト管理の仕組み (その5)
前回のその4:プロジェクトの進捗管理に続いて解説します。前回は CMMI を使い、要件管理、計画作成、進捗管理のポイントを紹介しました。多くの開発組織で...
前回のその4:プロジェクトの進捗管理に続いて解説します。前回は CMMI を使い、要件管理、計画作成、進捗管理のポイントを紹介しました。多くの開発組織で...
マトリクス体制での品質保証1 プロジェクト管理の仕組み (その30)
適切な品質管理を実施できるような仕組みを構築し、運用することが品質保証であることを前回説明しました。品質管理を正しく実施するポイントは、製品(ここではサ...
適切な品質管理を実施できるような仕組みを構築し、運用することが品質保証であることを前回説明しました。品質管理を正しく実施するポイントは、製品(ここではサ...
品質の仕組みとは1 プロジェクト管理の仕組み (その27)
製品開発を行っている組織において、設計・製造の仕組みを構築したり見直したりするというとき、品質向上に貢献することが何らかの形でゴールのひとつとなっている...
製品開発を行っている組織において、設計・製造の仕組みを構築したり見直したりするというとき、品質向上に貢献することが何らかの形でゴールのひとつとなっている...




