『坂の上の雲』に学ぶ先人の知恵(その20)

更新日

投稿日

&nb...
 
 『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場で勝利をおさめる為のヒントが豊富に隠されています。『坂の上の雲』に学ぶマネジメント、『学習する組織をめざせ』の章です。活動するたびにいつも組織と構成員の成長があること、そのしくみが「学習する組織」です。それをめざすにはどうするのか、この章で解説しています。
 

3. 仕事の意義を自分なりに理解する

 
 成功したいと願えば、どんな下積みの仕事でも逆境においても、必ずコレだというものを見いだせるのです。組織のミッション・仕事の意義を自分なりに理解していれば、仕事を通じて成長出来ます。森繁久彌氏はNHKに入社してすぐに満州に送られました。同期で満州に配属されたもうひとりは、東京でなくどうしてこんな田舎、僻地なんだと嘆いて投げやりになったそうです。一方、森繁氏は満州にいる何十万人もの日本人全部に、私がアナウンサーとして語りかけることができる、こんなかけがえのないチャンスはまたとない、と感じて一生懸命だったということです。
 
 配属されたのが本社勤務でなく、田舎の工場だったと腐る人と腐らない人もいるようですが、似たようなもので、自分なりに意義を理解するかにかかっているのです。この段階では将来の自分の成長を考えていなかったとしても、自分の仕事の意義を理解することができればそれで十分です。
 

4.「1行報告」で社員が成長した

 
 1行報告の会社は、現場の仕事を通じて育成に成功したお手本のようなケースです。この会社は、通信関係のエンジニアリングサービスをする仕事をしています。現場で工事や測定をする人たちが携帯端末からWebサイトを使って1行報告を書き込むのです。現場の状況を、今こうなっている、ああなっていると報告するのです。現場でわからないことがあれば、逆に会社のデータベースから1行報告で集まっている必要な情報を検索して、自分たちの仕事はどんどんはかどっていきます。
 
 しかも、こうした仕事のしくみや進め方が素晴らしいので、1行報告のシステムとして商品につくりあげて販売するとともにコンサルティングも行っています。下請け専門だったころと比較すれば、従来のビジネスのほかに新規ビジネスを立ち上げ、会社を成長させているのです。
 

5. 人が成長するしくみを作る

 
 人の成長を考えるのは、日本的経営の美風だと思います。その割には成長のしくみづくりは下手です。アメリカやヨーロッパは大変上手で、しくみの成熟度を評価する指標を売り物にしているほどです。しかし、本気で育てようとする気はあまり感じられないのです。こういうふうに育てないと儲からないと考え、別の目的で育てているように見えます。
 
 日本は人を育てることについては基本的に良いことであるとの共通した考えがあると思います。しかし、具体的なしくみづくりができているかと問われると、その人任せになっており、担当する人によってバラツキが多くなるでしょう。つまりマネジャーによってバラツキが大きいのです。育てるつもりがあるのに効果がバラバラでは、もったいないというより、むしろ欠点だと言えるでしょう。
  
 人的資源マネジメント:ポジティブ感情
 

6. 日露戦争の海軍と陸軍のしくみづくり

 
 海軍のしくみづくりで一番目立つのは、刷新人事を図ったことです。明治維新の功労者だが、最新の軍艦や軍略の知識がなく近代的組織経験のない時代遅れの人々を全部クビにしたのです。そして、海軍大学校卒の若い人々を海軍の要職につけたことにより、新しい海軍のしくみをつくる上で大変な力となりました。
 
 陸軍も基本的には同じですが、ただ違うのはいわゆる派閥均衡人事で大失敗しているのです。薩摩藩が組織のトップにいるとサブの地位には長州藩を付ける、またはその逆。また、藩閥的に無印の人には無印のサブリーダーをつけるなど。いずれにしても派閥均衡人事ではどうしても人材が偏ってしまうし、組み合わせも変になってしまうのです。しくみとしてはベストを目指したとは言えないでしょう。だからうまく機能しない。とくに旅順要塞攻略の乃木軍では、大将と参謀長のコンビがうまくいかずに最悪の結果になってしまったのです。旅順要塞を陥落させることはできたのですが、空前の大損害の責任をとる形で参謀長はその地位を交代させられています。
 
【出典】
 津曲公二 著「坂の上の雲」に学ぶ、勝てるマネジメント 総合法令出版株式会社発行
 筆者のご承諾により、抜粋を連載
 
  

   続きを読むには・・・


「人的資源マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
技術企業の高収益化:経営者の信頼残高が技術戦略を左右する

◆ 技術戦略と恐怖政治の奇妙な関係とは  「代わってもらって良いんだよ」と温かく社員に声を掛けたのは、A社長でした。  「温かく」と書くといい雰囲...

◆ 技術戦略と恐怖政治の奇妙な関係とは  「代わってもらって良いんだよ」と温かく社員に声を掛けたのは、A社長でした。  「温かく」と書くといい雰囲...


エンゲージメントとは~技術企業の高収益化:実践的な技術戦略の立て方(その9)

  ◆ 社員のエンゲージメント向上に必要な事とは  世相は世相ですが、私のクライアント企業の方は実に楽しそうに仕事をしている人が多いです...

  ◆ 社員のエンゲージメント向上に必要な事とは  世相は世相ですが、私のクライアント企業の方は実に楽しそうに仕事をしている人が多いです...


技術企業の高収益化: 本物のリーダーは気迫を養う

◆ 経営者が養うべき「気迫」とはなにか  「何か良い方法がありませんか?」  数年前の話です。次期経営者になる予定の方(仮にAさんとします)からそ...

◆ 経営者が養うべき「気迫」とはなにか  「何か良い方法がありませんか?」  数年前の話です。次期経営者になる予定の方(仮にAさんとします)からそ...


「人的資源マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
人的資源マネジメント:高いパフォーマンスを実現する組織文化(その1)

 職場の一人ひとりがやりがいを持ち、イキイキと充実した状態で仕事ができること、そして、そういう職場環境を通じて組織が最高のパフォーマンスを発揮できることを...

 職場の一人ひとりがやりがいを持ち、イキイキと充実した状態で仕事ができること、そして、そういう職場環境を通じて組織が最高のパフォーマンスを発揮できることを...


『坂の上の雲』に学ぶ先人の知恵(その10)

    『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネ...

    『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネ...


人的資源マネジメント:モチベーションとは(その1)

【モチベーションの考察 連載目次】 1. 大切なのは一人ひとりと向き合うこと 2. コンフォートゾーンとは 3. やれないのはモチベーションのせ...

【モチベーションの考察 連載目次】 1. 大切なのは一人ひとりと向き合うこと 2. コンフォートゾーンとは 3. やれないのはモチベーションのせ...