ワークライフバランス : 新環境経営 (その35)
新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきましたた。今回からは、積み上げられてきたそれらの知恵の上に、目指すべき今後の新環境経営について解説していきます。
1. 新環境経営の視点
国連のグローバルコンパクト(UNGC)では、人権の尊重がトップで2項目、続いて労働についての原則が4項目、環境についての原則が3項目となっています。環境経営を行い、「環境」問題にひたむきに取り組んできた結果、社会的信頼を高めることが出来た企業は多いのですが、その一方で、それを担う従業員の労働意欲、満足度はどうでしょうか。残業過多、遠距離通勤で企業価値向上に取り組んでも、従業員が疲弊した状態では、労働意欲は高まらず、働き手の能力を引き出すことが出来ず、新しい発想は生まれず、組織としての力が発揮できません。日本では、UNGCが求める人権尊重の経営をしているとは言えない状況です。
2. 残業過多、遠距離通勤の弊害
日本は労使で残業を是認する36協定を結び、人を増やさないで残業で対応して人件費を抑えてきました。これは資源の少ない日本が、労使で協調して戦後復興に取り組む知恵として、社会規範の様になっています。一方、西ドイツでは、1960年代に敗戦の復興を終え、社会的共通資本を整備に取り組み、基本的人権が尊重される福祉社会、仕事よりも家庭が優先するゆとりがある社会を創ってきています(暉峻淑子(てるおかいつこ)さんの「豊かさとは何か」)25年以上前に書かれた本ですが、改めて読み返してショックを受けています。同じ敗戦国でありながら、日本は未だに家庭を犠牲にした働き方からの脱却が進見ません、時短が進んでいない、36協定も健在。基本的人権が疎かにされています。ヨーロッパの良いところを取り入れ、もうエコノミックアニマルを卒業する時期です。
3. ワーク・ライフ・バランス
近年日本でも、ワーク・ライフ・バランスが叫ばれていますが、ワーク・ライフ・バランスは仕事と家庭、社会活動を両立させてバランスの良い生活を目指すものです。そもそも、これらを並立させてこそ、人間として豊かな気持ちで生活を送れるはずなのに、戦後の日本は廃墟からの復興ということで、経済活動を最優先して人生のバランスを疎かにして高度成長に邁進してきた現実があります。その結果、世界からは奇跡と言われるほどの高度成長を短期間で成し遂げ、一躍世界第2位の経済大国に上り詰めました。一方ではその代償としての公害問題があり、重金属等による中毒や大気汚染による喘息など、著しい健康被害を発生させ、悲惨な結果を残しました。
公害への取り組みは一定の成果を上げ徐々に改善に向かっていますが、GDPで世界上位の大国になっても、成長と競争に明け暮れ、それを残業過多、遠距離通勤で賄ってきました。バブル崩壊から数十年経った今も、基本的な社会構造は変わっていない様に感じられます。経済優先の結果として、仕事最優先で家庭は奥さんに任せっぱなし、育児、教育、社会活動に関わらない。社会的な存在としては不完全な働き手を大量に排出してきました。この様な働き手は、会社の論理に従順で、社会人としての体験を積んでいないため、発想力が退化し、働き手としてのパフォーマンスも十分とは言えません。
4. 健康経営
健康経営なる言葉が出てきました。これは社員が健康でなければ、企業としての競争力が保てないとのことで、社員の健康を維持するための会社の先進的な取組みとしてメディアで紹介されています。こんな当たり前のことがメディアで取り扱われること事態に違和感があります。又、敢えて先進事例として取り上げられる日本社会の労働環境に異常性を感じます。企業にとって、多くの時間と費用を投じて育てた社員が、疲れはてて、勤労意欲を無くして、「うつ」になり、あげくの果てに離職です。それは知的資産を失うことになり、大きな損失となります。高度成長を成し遂げた今は、働く環境を整えて、社員の定着率を高めることが持続可能な経営にとって、必須の取り組みです。
次回も、「新環境経営=持続可能な企業経営」について解説します。
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