汎用フライスとマシニングセンターのあるべき使い分け 伸びる金型メーカーの秘訣 (その40)
今回紹介する機械加工メーカーは株式会社O精密です。同社はマシニングセンターや汎用フライスなどを使って、中部地方の機械設備メーカーなどで使用される機械部品などのフライス加工を主力事業としています。3次元CAMであるhyperMILLの導入により、それを用いた3D加工にも力を入れています。
1. コアコンピタンス
同社の加工の強みとして、コストと品質のバランスに配慮した、最適な機械の使い分けを行っている点があります。補助金の活用などにより、同社はマシニングセンターの増設を行っていますが、フライス加工全てをマシニングセンターだけで行っているわけではありません。使用する工具の本数、加工する穴の数、使用するエンドミルの本数などによって、汎用フライスとマシニングセンターを適切に使い分けており、これによって最適な工数で加工を行うことを徹底しています。
2. 金型メーカーの課題
筆者が金型メーカーをコンサルティングさせていただいている中で、まさにこの点について課題だと思うことがあります。
その課題とは、CAMデータ作成とマシニングセンターのオペレーション業務の分業化が進み、例えば、片手サイズのプレートにキリ穴を2、3か所加工するような内容のフライス加工についても、CAMオペレーターが加工プログラムと加工指示書の作成を行い、それを受け取ったマシニングオペレーターがワークとプログラムを機械にセットして加工を行うといった、コスト面からはやや過剰とも思えるプロセスを踏んでいる点です。
こうしたプロセスはミスの発生防止には効果は高いのですが、図面を見ながら汎用フライスで手早く済ませてしまう場合の工数と、CAMデータを作成し加工指示書まで作って加工者に渡す分業での工数とを比較すると、圧倒的に汎用フライスの方が早いと思われます。
もちろん汎用フライスはうっかりミスのリスクがつきまといます。しかし両者の工数の差を考慮すると、例えば片手サイズのプレートであれば、ミスした時のために材料を余分に買っておいたとしても、加工部品によっては汎用フライスの方が安くできるかもしれないのです。そのくらい両者の工数には差があると考えています。したがって加工コストの最適化のためには、CAMとマシニングオペレーターの分業について、その程度を少し抑えていくことが望ましいと考えています。
具体的には、マシニングセンターの手動機能を活用し汎用フライスのように利用します。簡単な穴加工や切削加工についてはハンドル送りで対応するなど、過度にCAMに依存しないことが、金型メーカーのフライス加工の工数削減につながると思われます。もちろん、こうした作業を行うためには、これまでの段取り作業には重要視されなかった加工や工具に関する知識が必要になってくるため、教育によるオペレーターのスキルUPが必要になります。
3. 汎用フライスとマシニングセンターのあるべき使い分け
汎用フライスとマシニングセンター、それぞれの持ち味を活かす使い分けとしてどのように考えれば良いのでしょうか。そもそも、マシニングセンターの強みを発揮できる場面は、次のようなケースです。
- 同じものを複数個加工するとき。
- 使用する工具の本数が多い加工のとき。
- 荒取りの切削体積ボリュームが多い加工のとき。
- 高送りカッターや超硬ドリル、チップ式ドリルなど、市販の高能率工具が使用できるとき。
- 自由曲面など3次元の加工を行うとき。
- 長時間の無人加工を行うとき。
逆に、上記のマシニングセンターの強みが発揮できるケース以外の加工では、汎用フライスの強みが発揮できる場面だと言えます。例えば、次のようなケースです。
- 試作品など、少量の加工のとき。
- 多くても2、3本の工具で済む加工のとき。
- 手動ハンドルによる手送りでエンドミル加工を行うとき。
- 強くクランプできない異形ワークの加工などで、切削負荷を調整しながら加工したいようなとき。
これら汎用フライスの良さは、加工を始めるまでの時間がとても短いという点です。ハンドル送りによる加工などは、段取りしてすぐに加工を始めることができます。
また手送りによるエンドミル加工では、とかくマシニングセンターでは送り速度やロードメーターなど数値でしか判断できない切削負荷について、実際に手に負荷としてかかってくる切削抵抗を肌で感じとりながら、送り速度の調整を行うことができます。
こうした点についても、汎用フライスの経験のない最近の若手加工者が加工条件の限界がわからないといった弊害につながっていると筆者は考えています。
同社では昨年、未経験の若手社員が入社しましたが、いきなりマシニングセンターを担当させるのではなく、あえて汎用フライスから担当させることで、加工限界を理解した伸びしろのある加工者に育てる配慮をしています。
4. 金型特有の形状加工への配慮
前述したように同社は現在、金型加工に力を入れています。しかしながら、そのノウハウはまだ持っていなかったため、同じhyperMILLを使用している筆者がサポートを行うことになったのです。コンサルティングのポイントは、微細な溝加工など金型加工特有の特殊な加工についてであった。特に微細な溝加工は、用いるボールエンドミルの加工条件の選定が難しいことです。
筆者が金型メーカーのCAMオペレーターの作業を拝見させていただくときに気になるのが、パスの形状に関係なく、一律に工具カタログの条件どおりの送り速度を使っている点です。
今回の鋳造用金型にあるような微細な溝部では、工具カタログにあるような、推奨速度までは出ないのです。したがって機械の動作速度に配慮し、機械が追従できる送り速度に設定するのがCAMオペレーターのテクニックです。一般的な機械部品の3D加工には慣れている同社でしたが、今回のコンサルティングではこのような金型特有の形状加工への配慮を中心にアドバイスを行いました。
5. 加工技術者の能力をフルに活かす機械の使い分け
同社は、3次元測定機の導入を行い、従来よりもさらに精密で複雑な部品の加工についても保証できる体制を整えることができました。今後同社の成長戦略として、これまでに受託してきた部品とは異なる機械加工に対応するため、これまで導入してきた立形マシニングだけではなく、横型マシニングや5軸マシニングなどの導入も視野に入れています。
同社の用いるhyperMILLは、5軸加工を最も得意とするため、今後同社が5軸マシニングを導入すれば、その強みを最大限に発揮することもできるでしょう。これらの設備計画により、溶接製缶品や鋳物部品などの機械加工へも力を入れていく検討をしています。最新のCAD/CAMやマシニングセンターを設備しながらも、それを扱う加工技術者の能力をフルに活かす機械の使い分けにより、競争力を高めていこうとする同社に、筆者は大きな期待をしています。
この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「型技術」掲載』の記事を筆者により改変したものです。
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