実験計画法とは何なのか
更新日 2022-09-22
投稿日 2018-10-23

技術者や研究者に最も必要とされているスキルは、処理効果を統計的に検証する統計学、そして効率的な実験を計画する能力です。インターネットの発達、グローバル化が進む中、激しい競争に打ち勝つためには膨大なデータを検証する統計学の知識が必須です。
しかし、残念ながら日本では統計学の教育が充実しているとは言えず、多くの技術者・研究者が「統計学への苦手意識」を持っています。結果として、実験計画や統計的分析が十分にできていません。
実験計画法は、工学や心理学やマーケティングリサーチや実験関係全般など、さまざまなデータを活用するうえで重要な考え方です。もう少し具体的に言うと、変数間の因果を検討する方法です。今回は、実験計画法とは何なのかを事例をまじえて、解説します。
1.実験計画法とは
実験計画法とは、開発、設計、生産、製造などで実験する際に、評価する特性と、それに対して影響すると考えられる要因との関係性を調べる方法の体系です。現代統計学の父と言われているロナルド・エイルマー・フィッシャー博士が考案しました。
実験計画法は、効率の良い実験方法を設計(デザイン)して、結果を適切に分析する統計学の応用分野の学問のことを言い、実験に際しては、勘、経験だけに頼らず、統計手法を使いながら、より少ない費用と時間で有効な結果が得られるように、計画、実行することが肝要です。
実験計画法は、医学・工学・心理学・農業からマーケティングに至るまで、幅広い業界で利用されています。
実験計画には、1因子の水準の変化と影響を把握するための一元配置実験、2因子の水準の変化と影響を把握する二元配置実験、因子が3つ以上の場合の多元配置実験があります。
その他にも実験計画法には、分散分析、直交配列表(直交表)直交表を利用して実験数を減らす一部実施法などもあります。
2.「実験計画法」の目的とは
実験計画法の目的とは、「効率的で客観的な結論を得られるように実験を計画すること」です。
特に、品質管理のお仕事をされている方からすれば、「実験数を減らすために利用するもの」なのかと考えてしまいがちですが、実験計画法の本質は、「問題を解決するために、データをどういった方法で集めるのか、計画を立てる方法」です。
そのため、単純に実験数を減らすという目的ではありません。
通常であれば、実験を行っていく場合には、「要因」などを複数の種類で設定して、それらを一つ一つ組み合わせて実験を進めていきます。そのやり方が基本的に正しいのですが、手間ばかりが掛かってきてしまいます。効率的に実験・試験を行い、進めるために実験計画法があり、複数要因を一緒に実験・試験をしていける方法として、分散分析があります。
分散分析とは、比較したいグループが3つ以上存在する場合に使うことのできる統計手法のことで、3つのグループ間の中でデータにどのような差が出てくるのかを検定します。
3.「実験計画法」のメリットやデメリット
実験計画法の最大のメリットは、結果として「試験回数を減らすこと」ができる点です。また、データの分析結果としては、条件の内容がどの程度関りがあるのかを数値データで結果が分かるという点も挙げられます。
実験計画法のデメリットとして、水準を等間隔に設定して実験を行わないと以下の3つのデメリットが発生します。
デメリット1:効率の悪化
3水準を行う実験では、1水準と2水準を殆ど等しい値に設定してしまうと、得られる結果が2水準の実験と殆ど変わらないという悲惨な状況になってしまう可能性もあります。
デメリット2:計算の煩雑化
多水準(複数)の因子で、直交多項式による分解を使って1次効果や2次効果を求める実験の際に、計算がとても煩雑になってしまうケースもあります。
この時に使用する係数は、等間隔の場合には、直交多項式の表に載っている値がそのまま使えますが、等間隔でない場合には、自分で計算して求めないといけない事態になることもあります。
デメリット3:判断ミスの原因になる
不当間隔であることを忘れてしまい、等間隔の要因図式を書いてしまったり、等間隔の公式を使用して分析を行ってしまうなどのミスをしてしまうこともあります。
4. 実験計画法、実験の効率を上げるために行う直交表の実験
(1)直交表の実験についての想定
(2)実験の効率
◆ あくまでも各因子の主効果と因子間交互作用の原因を調べたい場合。
◆ ばらつきの原因を調べるのをやめるという発想。
5. 事例:実験計画の水準ずらし法とは
今回は、ポリマーを合成し、あるノイズに強くしたい事例で、品質工学を使う場面を想定します。合成に用いる因子間の交互作用が強く、通常の直交表では合成できない実験が多数できてしまう事例で、水準ずらし法での解決ですが、次のように問題点を2つに分けて解説します。
(1) 合成できない組み合わせができてしまう問題。
この場合、合成できる範囲があらかじめだいたい想定できているのであれば、それを制約条件とするような関係式を作って水準を決めます。反応温度と反応時間なら、反応温度が低いときは長めの時間の3水準、温度が高いときは短めの時間の3水準という具合です。固有技術的な知見もいると思います。
直交表の条件中(例えば16条件中)、いくつか合成できない条件があっても、欠測値の処理を行えば推定できる場合も多いので、「当たりを探す」とい意味ではあまり制御因子の水準を狭めすぎないほうがよいと思います。
また、範囲に制約があるということは、自由度(数学的な意味です)が1つ減るわけですから、独立変数の数に気を付けてください。たとえばAとBの組成比が合計0.5と決まっているような場合は、Aを決めればBは従属的に決まるわけですから、Bを独立な因子として扱うことはできません。
(2) 制御因子間に交互作用があって、正しく推定できない問題。
水準ずらしを行うケースとして多いのはことらの場合です。目的は制御因子間の交互作用の消去です。化学合成などの分野ではこの問題のほうが圧倒的に大きいはずです。
どのような水準ずらしをすれば交互作用が消えるかは、固有技術(工学)的な問題です。AとBの値をそのまま水準にすると交互作用がでるが、Aの水準を決めた上で、Bの水準はAの値との比率で決める(たとえば、B1=0.5A、B2=1.0A、B3=1.5A)などのやり方です。
また化学系の場合、制御因子の選ぶ際に温度や時間や組成といった、実験者が直接操作できる因子を選びがちですが、それが適切なのかどうかもよく考える必要があります。
化学系の実験計画法では、品質工学は交互作用や多特性になる問題があって、かなりノウハウがいります。専門家のご指導を受けられるのがよいと思います。コンピュータシミュレーションができず、実験も大規模になることが多いので、できるだけ手戻りがないように事前に手を打っておくべきです。
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