R&Dマネジメントの基本

更新日

投稿日

1.2...

1.2軸思考

 
 R&D研究・開発マネジメントの基本思想:「2軸思考」について、解説します。「2軸思考」には、次のような意味があります。研究・開発現場は、常に2軸の目標を持って仕事に取り組む必要があります。1つは横軸であり、「事業軸」と呼んでいます。これは、財務的な経営成果にダイレクトにつながる目標です。例えば、魅力的な新商品を開発する、競争力のある技術を実現する、あるいは開発期間を短縮する、製品のコストを削減するといった目標です。この目標に向けて、技術者、研究者は日々協力し、知恵を集めて仕事をします。
 
 同時に、研究・開発は、常にもうひとつの目標を持つ必要があります。この2つめの目標を、縦軸あるいは「基盤軸」と呼んでいます。この基盤軸(縦軸)は、少し先を見据えて研究・開発が強くなっていくために必要な目標です。例えば、技術者、研究者をパワーアップする、開発のプロセスや標準などを整備する、3D-CADやCAEなどのITを使った開発インフラを構築する、技術者、開発者が働きやすい環境をつくる、など研究・開発現場を継続的に改善していくための目標です。基盤軸(縦軸)は、財務的な成果に比べて見えにくいものですが、横軸と同じく重要な目標です。
 
 さらに、「2軸思考」における最も重要な考え方は、“事業軸(横軸)と基盤軸(縦軸)を分離させない”ことです。すなわち、技術者、研究者が現場で取り組んでいる今の仕事のなかに、この2つの目標を常に埋め込んでいくことが重要です。基盤軸(縦軸)の仕事は、ともすれば現場と乖離してしまいがちです。専門のスタッフチームが作られ、現場の技術者、研究者から離れたところで仕事をしている例をよくみます。組織としては、2軸思考でマネジメントしているつもりでも、結局、現場の技術者、研究者は事業軸(横軸)だけの世界で仕事をし、基盤軸(縦軸)は一部のスタッフがちょこちょこと何かやっている、そんな状況に陥ってしまいます。事業軸(横軸)と基盤軸(縦軸)が現場の仕事の中でうまく噛み合うと、研究・開発現場はダイナミックに変化していきます。そして、ひいては事業軸(横軸)の大きな成果を生み出すことになります。
 

2.2軸思考の事例

 
 ある食品会社の開発チームでは、開発メンバーが担当する一つひとつの仕事に必ず2つの目標を設定しています。メンバー一人ひとりが常に2軸思考を意識し、仕事で成果をあげるために、そして開発者として成長するために何を達成するのかを明確にしながら仕事をしています。この2軸目標の内容については、定期的にチームメンバーとリーダーの間で語り合いをしています。また、期末や期初などのタイミングで、その成果と反省をミーティングで発表し、チームメンバー全員で共有しています。
 
 また、ある精密機器メーカーでは、開発企画と呼ばれるスタッフチームが組織されています。しかし、このチームのメンバーは、ほとんど自分の席にはいません。メンバーは、常に開発プロジェクトのなかに入り込み、プロジェクトリーダーをサポート(開發の状況をウオッチしたり、会議を開催・運営したり、資料作成を手伝ったり、技術者の悩みや愚痴を聴いたりなど)する中で、開発現場に改善をしかけています。
 

3.2軸思考でスパイラルアップ

 
 私は、これまでいろいろな会社の研究・開発現場を見てきましたが、事業軸(横軸)だけでマンネジメントしている、もしくは2つの軸がバラバラに分離している研究・開発で成果を上げている例は見たことがありません。一時的にヒット商品がでたり、技術開発に成功する場合もありますが、中期的には弱くなっていきます。反対に、2つの軸がしっかりかみ合いマネジメントされている研究・開発は、それぞれの成果が相互作用してスパイラルアップし、ダイナミックに進化していきます。「2軸思考」は、研究・開発マネジメントの基本思想であり、普遍的な原理であると、私は考えています。さらに広げて考えると、この思想は、研究・開発にとどまらず、様々な現場、仕事に適用できるものであると考えています。
 
 

   続きを読むには・・・


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
自社の行く末を徹底して考えるとは 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その27)

 KETICモデルの中の知識(Knowledge)の内、ここまで3回にわたりコア技術について解説していましたが、肝心のコア技術とは何か?それをどう設定する...

 KETICモデルの中の知識(Knowledge)の内、ここまで3回にわたりコア技術について解説していましたが、肝心のコア技術とは何か?それをどう設定する...


設計標準の必要性と作り方(その2)

1.設計標準はベストコストのガイドライン  前回のその1に続いて解説します。一部の大手製造業では、コスト意識を高めてベストコストでの製品設計を実現す...

1.設計標準はベストコストのガイドライン  前回のその1に続いて解説します。一部の大手製造業では、コスト意識を高めてベストコストでの製品設計を実現す...


リーン製品開発が開発チームの行動様式を変える

   今回は、リーン生産方式とリーン製品開発について解説します。リーンとは何でしょうか。リーンとは、英語のleanのことで「やせた」、「細...

   今回は、リーン生産方式とリーン製品開発について解説します。リーンとは何でしょうか。リーンとは、英語のleanのことで「やせた」、「細...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
マトリクス体制での品質保証1 プロジェクト管理の仕組み (その30)

 適切な品質管理を実施できるような仕組みを構築し、運用することが品質保証であることを前回説明しました。品質管理を正しく実施するポイントは、製品(ここではサ...

 適切な品質管理を実施できるような仕組みを構築し、運用することが品質保証であることを前回説明しました。品質管理を正しく実施するポイントは、製品(ここではサ...


仕組みの見直しに成功する組織1 プロジェクト管理の仕組み (その25)

 この連載では、仕組みの見直しをテーマに様々な考え方や事例を紹介しているわけですが、実際にコンサルタントして仕組みの見直しに取り組んだ組織の中には成功して...

 この連載では、仕組みの見直しをテーマに様々な考え方や事例を紹介しているわけですが、実際にコンサルタントして仕組みの見直しに取り組んだ組織の中には成功して...


「あったらいいな」を技術シーズ起点に発想する~製薬会社の新しいアイデア創出に向けた取り組み

♦新製品開発のアイデア創出に“新たな風”吹き込む  小林製薬(大阪府)社は「“あったらいいな&rdq...

♦新製品開発のアイデア創出に“新たな風”吹き込む  小林製薬(大阪府)社は「“あったらいいな&rdq...