アセチレンの研究に没頭していたアメリカの化学者ジュリアス・オーサー・ニューランドは、ある時アセチレンを銅とアルカリ金属の塩化物の溶液に通すと奇妙なにおいがすることに気づきました。このにおいのほかに、これといって激しい反応があるわけではありませんでしたが、彼はそのにおいに触発され、新しい生成物の存在を確信したの...
発明事例-実験で出たガスの臭いから未知の生成物を直観、合成ゴム発明の物語
アセチレンの研究に没頭していたアメリカの化学者ジュリアス・オーサー・ニューランドは、ある時アセチレンを銅とアルカリ金属の塩化物の溶液に通すと奇妙なにおいがすることに気づきました。このにおいのほかに、これといって激しい反応があるわけではありませんでしたが、彼はそのにおいに触発され、新しい生成物の存在を確信したのです。
その日から実に14年間もの間、ニューランドはその研究を続け、ついに天然ゴムに多少似た弾性物質ができましたが、柔らかすぎて実用化するにはほど遠いものでした。
その後デュポン研究所のE・K・ボルトン博士が、ニューランドの講演を聞いてその発見の重要性に注目し、合成ゴムの開発に乗り出しました。しかし、デュポン社の化学者による研究はことごとく失敗の憂き目を見ます。研究はいったんは頓挫していましたが、皮肉にも全く異なる目的のために再開されたジビニルアセチレンの研究から、特殊用途ゴムとして利用されるネオプレンという物質がつくり出されました。
紆余曲折あって完成した研究でしたが、結果としてみれば、発端となった奇妙なにおいのガスこそが、合成ゴムの重要な成分であることがわかったのです。五感を働かせる重要性を物語ります。
出典:「ひらめきの法則」 髙橋誠著(日経ビジネス人文庫)
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